ストルバイトの療法食はシュウ酸カルシウムの原因になる!???
その情報は正しいのか?!
犬猫共にこの内容のお問い合わせやご質問が非常に多いです。
「ストルバイト用の療法食を与えていますが、与え続けるとシュウ酸カルシウムの結石が出来るのでは無いかと心配です。大丈夫でしょうか?」
この内容のお問い合わせが多い原因は、動物病院やインターネット、書籍などで語られる「ストルバイトの原因は尿のアルカリ化」「シュウ酸カルシウムの原因は尿の酸性化」「ストルバイト用の療法食は尿を酸性化させる」この3点となります。
この3点の内容が正しければ確かにストルバイト用の療法食を与え続ける事によってシュウ酸カルシウム発症のリスクが高くなる事になります。
なので、今回はこの3点の内容が正しいかどうかを考えていきたいと思います。
間違った情報を鵜呑みにしない!
まずは「ストルバイトの原因は尿のアルカリ化」についてですが、これは当コラムでも何度も説明をしておりますが正しい情報です。(参考コラム ●ストルバイトの原因と予防について。膀胱炎も。 第一章)
大半が間違った食事の与え方や乱れた食生活が原因で尿がアルカリ化してストルバイトを発症します。
次に「ストルバイト用の療法食は尿を酸性化させる」については微妙な点もありますが、概ね正しい情報です。
ストルバイト用の療法食は大きく分けると次の2種類に分かれます。ひとつは、たんぱく質を制限して尿のアルカリ化を防ぐタイプ。もうひとつはタンパク質は制限せずに尿を酸性化させる成分が多く含有していたり、飲水量を増やす為に味が濃くなっているタイプ。
前者は強制的に尿を酸性化させるタイプのフードでは無い為、使用すると同時に食生活の見直しも必要になります。
後者は前者と違って、置きエサをしたり、1日に何回もダラダラと食事をさせても尿酸化成分の働きでストルバイトの予防が可能なフードになります。(この考えは当店ではおすすめしておりません。)また、このタイプのフードは尿酸化成分を摂取するにはフードを食べて貰わないと話にならない為、嗜好性を良くする目的で高たんぱく質になっているケースが目立ちます。従いまして、両者共に尿を酸性化する働きはあると言う事です。
最後に「シュウ酸カルシウムの原因は尿の酸性化」についてですが、これは間違いです。シュウ酸カルシウムは尿のpHとは関係がありません。アルカリ尿でもシュウ酸カルシウムの結石は作り出されます。この点を勘違いしている人が非常に多いです。
と、言う事はストルバイトの療法食はシュウ酸カルシウムの原因にはならないと言う事でしょうか?
pHは関係無いが注意は必要!
ストルバイトの療法食はシュウ酸カルシウムの原因になるかですが、答えは「なる」です。
但し、それはストルバイトの療法食に限った事ではありません。そもそもシュウ酸カルシウムの原因はたんぱく質の摂取過多や脂質の摂取過多、食事そのものの摂取過多が原因となります。
ストルバイトの療法食の中には、たんぱく質を制限している代わりに脂質を多く含むフードがあります。このようなフードを食事の回数や量を定めずに置きエサ状態で与えていると、高確率で脂質の摂取過多となります。
何故、脂質の摂取過多がシュウ酸カルシウム発症のリスクを高めるかですが、改めてシュウ酸カルシウムの原因についてまとめますと、食事に含まれるシュウ酸は本来、腸管内でカルシウムと結合して排泄されます。
しかし脂質を多く摂取する事で、腸管内で脂質とカルシウムが結合してしまい、シュウ酸と結合するはずのカルシウムが欠乏し、シュウ酸が便と一緒に排泄されずに尿中に流れてしまいます。その排泄されずに流れ出たシュウ酸が尿中でカルシウムと結合して出来るのがシュウ酸カルシウム結石です。
よって、シュウ酸カルシウム結石の予防には、シュウ酸と脂質の摂取を制限する事が大切です。また、動物性たんぱく質の過剰摂取は尿中のシュウ酸増加に繋がるので要注意です。
ですが、置きエサをして無制限に食べる事が出来る環境を作っていたり、一日に何度も食事を与えたりするとシュウ酸も脂質も摂取過多となります。
特にストルバイト予防の脂質を多く含むフードや、嗜好性を良くする目的でたんぱく質を多く含むフードを量を制限せずに与え過ぎると、尿のpHは関係無くシュウ酸カルシウムの結石が出来やすくなります。
結局は、どのようなフードを与えるにしても、置きエサをしたり、欲しがるからと言って何度も食事を与えたりはせずに、しっかりと適量を見定めて規則正しい食生活を行っていただく事が大切です。
あと、結石予防を目的とした「pHバランス水」のような製品がありますが、あんなのは何の役にも立ちません。ただのクソ高い水です。飲み水と結石は関係がありません。騙されないようにご注意ください。
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