尿のpHと食品のpHについて
酸性食品を食べると尿は酸性に傾くの?
よく聞かれます。「ストルバイトと言われました。尿を酸性にする為に酸性食品を沢山与えた方が良いですか?」
もう少し詳しく説明しますと、ストルバイト結石は尿のアルカリ化が原因です。尿を酸性に傾けると症状は緩和します。その為には、酸性食品を与えて尿を酸性に傾ければ良いですか?と言う内容です。酸性食品とは、その食品を燃やして出来た灰を水に溶かした際にその水のpHが酸性に傾く食品の事で、具体的には肉や魚などのたんぱく質を多く含む食品は一般的に酸性食品となります。と言う事は先の質問は、「ストルバイトと言われました。尿を酸性にする為にお肉や魚をを沢山与えた方が良いですか?」と言う事です。
酸性食品を食べても尿は酸性に傾きません!
結論から申しますと、酸性食品を食べても尿のpHは酸性に傾きません。逆にアルカリ性食品を食べても尿のpHはアルカリ性に傾きません。これは血液も同じです。ひと昔前に、酸性食品ばかりを食べていると体が酸化して老化が進むので積極的にアルカリ性食品を食べましょう!と良く言いました。ちなみにアルカリ性食品とは主に野菜や果物です。但し、あながち間違いでは無いのが、野菜や果物には、ビタミンやポリフェノール、カロテノイドなど抗酸化作用のある栄養素が多く含まれており、健康に役立つと言う点です。何度も言いますが、アルカリ性食品だから抗酸化作用があると言うわけではありません。
フードのpHで尿のpHはコントロール出来ません!
最近のフードパッケージには製品のpHが記載されている事があります。メーカーの真意は定かではありませんが、飼い主様の中にはフードのpHが尿のpHに影響するとお思いの方も多いはず。購買意欲を高める戦略と受け取られても仕方がありません。逆に飼い主様は勘違いをなされないようにお願いします。弱酸性のフードを食べても弱酸性の尿が作り出されるわけではありませんので。また、「このフードは尿のpHを6.2~6.5に保つように設計されています。」のような表現をしている製品もありますが、そんな事は実際に食べてみないと分かりませんし、食べた直後の数値なのか空腹時の数値なのかも分かりません。参考にすらならないと考えていただいても良いと思います。
シュウ酸カルシウムでも大きな勘違いが!
犬猫にとって、ストルバイトの次に多いと言われる結石がシュウ酸カルシウム。名前がシュウ酸とカルシウムなので、シュウ酸とカルシウムの摂取を制限する必要があるとお思いの方がおられます。シュウ酸とはいわゆる「灰汁(アク)」です。シュウ酸はあらゆる食品(食材)に含まれます。完全に避けて過ごすのは不可能な事です。ですから、少なくともシュウ酸はある程度摂取してしまっても、カルシウムの摂取は可能な限り控えたいと考えてしまいます。それが大きな間違いです。シュウ酸は本来、腸でカルシウムと結合して便と一緒に排泄されます。しかし、排泄しきれなかったシュウ酸が尿中でカルシウムと結合してシュウ酸カルシウムとなってしまいます。ですから、カルシウムの摂取量が少ないと便と一緒に排泄されるシュウ酸が減り、尿中のシュウ酸濃度が高まると言う事です。人間の食事に例えると非常に分かりやすいです。人間の食品でシュウ酸を多く含む代表が、「ほうれん草」「たけのこ」「コーヒー」です。犬猫と違って、人間に最も多い結石はシュウ酸カルシウムです。それを防ぐ為に、「ほうれん草にはちりめん」「たけのこには鰹節」「コーヒーには牛乳」と、シュウ酸を多く含む食品にはしっかりとカルシウムが含まれる食品を加えています。何事にも意味があると言う事ですね。