犬の慢性腎不全のお食事について
猫だけではありません!犬の腎不全も急増しています!
前回のコラムでは猫の慢性腎不全のお食事についてお話をしましたが、数十人もの方から「犬の慢性腎不全の食事についてもお願いします!」と大変有難いお声を頂戴致しましたので、今回は犬の慢性腎不全のお食事についてお話をしたいと思います。
数年前までの感覚では慢性腎不全は猫の病気でした。しかし、ここ数年で犬の慢性腎不全が急増している感じがします。それ程多くのお客様から犬の慢性腎不全のお食事についてお問い合わせをいただきます。何故、犬の慢性腎不全が急増したかは定かではありませんが、原因のひとつには「お肉たっぷりのグレインフリーフード」が考えられます。また、それらのメーカーでは「高齢期も高たんぱくなフードを!」と謳う事も多いです。考え方は人それぞれだと思いますが、個人的には「高齢期も高たんぱくなフードを!」は反対です。
大切なのはたんぱく質の量では無く質!
確かに高齢期でもたんぱく質は必要です。とても大事な栄養です。しかしたんぱく質は体内でアミノ酸に分解出来てこそ栄養になります。どれほど沢山のたんぱく質を摂取しても体内でアミノ酸に分解出来なければ体の負担になるだけです。特に高齢期は、加齢によってタンパク質分解酵素を含む膵液の分泌量が低下しますので、若い頃よりもたんぱく質をアミノ酸に分解する力は衰えています。たんぱく質分解酵素が不足している状態で、たんぱく質をたっぷり摂取しても、肝臓や腎臓に負担を掛けるだけです。10歳近くになればたんぱく質摂取量を控え、不足してくるタンパク質分解酵素を酵素サプリメントでしっかりと補給するようにしましょう。また、たんぱく質を控えたフードは必然と炭水化物の比率が高くなり、消化不良による軟便などでお悩みになられるケースがあります。このような際でも酵素サプリメントには炭水化物分解酵素も含まれますので、炭水化物比率の高いフードでも軟便になることなくご利用いただけるかと思います。確かに犬は炭水化物よりもたんぱく質の消化の方が得意なのでたんぱく質を多く含むフードの方が綺麗な便は出ます。しかし、綺麗な便が出るフードが良いフードとは限りません。これは絶対に覚えておいてください。
10歳をこえた頃からの嘔吐は腎不全を警戒!
前回のコラムでも書きましたが、慢性腎不全は血液検査で診断します。しかし通常の血液検査では初期段階で判明しづらく、診断がくだされた時点では、既にかなり進行している場合があります。その為、ご家庭でのご愛犬の様子から判断して早い目の食事管理がとても大切になります。特に嘔吐です。元来、犬は空腹時の胃液以外はあまり吐きませんが、今までにない嘔吐が頻繁に見られるようになれば、慢性腎不全を疑ってください。また、お水の飲む量が増えたり、色の薄い尿が出ていると更に要警戒です。まずは、おやつを一切ストップして、ドッグフードを選び直してください。まずは、たんぱく質の摂取量を少し控えましょう。その時点では極端な低たんぱく食にする必要はありません。今現在お与えのドッグフードよりも少したんぱく質含有量の低いフードに切り替えてください。目安としては、10歳前後のご愛犬なら、たんぱく質含有量が18~20%程度のフードで良いと思います。また、ウエットフードを利用して水分摂取量を増やす事も効果的です。そして、ご家庭での様子や動物病院での診断に応じて食事を調節していきましょう。
絶対に甘く見ないでください!
腎不全は非常に怖い病気です。一度悪化すると良くはなりません。その為にも早期からの対策がとても大切です。食生活に妥協はしないでください。徹底した食管理で少しでも進行を遅らせてください。そして、もちろん動物病院による定期的な健康診断も非常に大切です。検査の結果次第では、腎臓病対応の低たんぱく食に切り替える必要もあります。お気軽にご相談ください。